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「パートが正社員との賃金格差に納得しない理由は何か」日本労働研究雑誌 2003 2・3 p58

補償賃金格差の理論に従えば,労働者は自分の効用を高めるような賃金と仕事内容の組み合わせを選択しているはずなので,パートと正社員を比較してパートが自分にとって効用が高いと判断した,「自発的なパート」は正社員との賃金格差に納得して入職しているはずである.しかし現実には,自発的に入職した者でも,賃金格差に納得していないパートが存在する.パートが納得できないのは,単に大きな賃金格差があるから,というだけの理由ではなく,それに加えて,パートと正社員の間で仕事内容や条件に明確な差異がないからである.特に,「職務上の責任度」や「勤務時間の自由度」が正社員とかわらないならば,格差への納得度は著しく低下する.逆に,自発的パート労働についた者でも,仕事の責任が正社員よりも軽減されているならば,納得度は大幅に改善している.

先行研究
パート労働に関する3つの見方

「パート就業の非自発性を問題視」という立場
 永瀬伸子(1995)*1など「就業機会の安定性に欠け,賃金などの労働条件が低く,技能も単純なものが多く,良好な就業機会ではない.」主にフェミニスト系.95年くらいまでの大沢真理先生などもここに入るかな?
「時間の自由が利き責任の軽いパートを『柔軟な働き方』として肯定的に評価」という立場
佐藤博樹,八代尚弘,日本経済研究センター,リクルートワークス研究所経団連など.人材ポートフォリオ系.あえていえばややネオリベ寄り.
本来は高い技能を持っている,いわゆる潜在能力がありながら,それが生かされないパートについていることを「技能の意味での不本意」と定義する立場
 脇坂明(1995)((脇坂明(1995)『パートタイマーの類型化(1)』岡山大学経済学会雑誌)第27巻第2号)による新たな見解.本人申告による「自発」「非自発」の2分論から先に進めているのがよさそうに思える.

「納得性」を入職後の効用と定義する.
「自発性」の議論が入職前の労働者の効用比較を扱っているのに対し,「納得性」は入職後の効用に着目している.

労働者が賃金と拘束度の関係のみによって行動するならば,賃金と拘束度の組み合わせが入職前の希望から乖離した時点で,労働者はパート労働から退出するはずである.しかし転職に際して,職探しのコスト,より悪い条件の仕事しか見つからないという転職コストがあり,それが大きいと予想されるならば,パートは退出せずに現在の職場にとどまるだろう.

データ日本労働研究機構1999 「職場における多様な労働者の活用実態に関する調査」
3/4以上のパートが「一般正社員と時間給で比較した場合,自分のほうが賃金が低いと思う」と回答

*1:『「パート」選択の自発性と賃金関数』「日本経済研究」No.28