知って得するフリーター読本 -トラブル対応から脱フリーターまで- 金子雅臣,2002
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タイトルは軽い読み物って感じですが,著者の金子氏は60年代からずっと東京都の労政事務所で労働行政に携わっていた方のようです.

内容.

七五三現象」というのが少し前からあって,「中学卒で正社員に就職した人の7割,高校卒の5割,大学卒の3割が入社3年以内に離職してしまう」という現象のことをこう呼んでいるそうです.

産業構造が変化したことを受けて,大卒であっても就職口は極端に減りはじめており,絶対数として就職できない若者は増大している.

これに加えて,いわゆる「職種のミスマッチ」という分類になる若者の言い分,「やりたい仕事がない」「やりがいのある仕事がない」「芸能・自由業を志望したい」とかの理由が指摘される,とのこと.

また,フリーターであることが許される背景としては,親の経済力にパラサイトできることが大きく,このようなことから,フリーターの増加は,「若者の甘えた考え方にある」という意見が出てくることもある.

表面上にあらわれる若者の労働観をもって「最近の若者はけしからん」といって非難されることは多いが,しかし問題はそれほど単純ではない.

雇用の絶対数の減少と産業構造の変化がまずあって,それが若者の就業意識の変化に大きな影響を及ぼしている,といった風に考えた方がよい.

産業構造の変化,の一つに「雇用の流動化」があって,派遣・パート・アルバイトなどの非正規雇用の労働者が急速に増加しており,産業にとってもそれらの労働者の存在が必要不可欠になっている.

今や,終身雇用や正社員としての働き方の崩壊は必然的な流れであると受け止められており,またこうした流れは必ずしも悪いこととは受け止められない状況となっている.

こうした状況の中で,若者に終身雇用による正社員幻想を押し付け,「フリーターはけしからん」ということはとてもできない.

つまり,産業がフリーターという結果をつくり出したのであって,若者の就業意識がフリーターという生き方を選んだのではない,ということ.だから,若者の考えや感覚を問題視することよりも,何故,このようにならざるを得ないのか,という原因を考える方が重要である,ということ.

本書はこのような状況を前提に,フリーターがどのような労働環境に置かれているか,不当な扱いをうけたときにはどうすればよいか,フリーター状態から脱するにはどうすればよいか,などについて具体的な話に進む.

アルバイトであっても労働基準法は適用されるのだから,仕事上のミスで生じた損害を給与から天引きすることや,契約時に1年間の雇用,とか期間の定めがあったのにそれより早期に契約が解消され給与の保障がされないこと,などは違法であるので声をあげることができる,など.

産業構造は流動化しているにも関わらず正規雇用と非正規雇用で保障などの面であまりにも大きな差がある,というのがやはり現代の一番大きな問題なのではないかと思う.
現状の正規雇用と非正規雇用の中間的な労働形態(例えば,短時間労働正社員など)をつくり出すべきだ,という意見があり,個人的には非常に共感します.

労働行政に大きく興味が出てきたのでそういう仕事をしてみたいです.しかしその場合には区より都なのかな,でも行政は都でも区でも自分のしたいことだけできるわけじゃなくて数年ごとに全く違う部署に配属される仕組みになっているから微妙ではあるんですよね.

卒論は「インターネット」にしようと思っていましたが「労働観」でもいいかな,とちょっと思いはじめています.