香山リカ「就職がこわい」

この前読了したけれど,読書メモを書かなかったのでもうすこし書こうかな.

「あんまり悩んだり気負ったりしないで、気楽に、気軽に就職活動やってみればいいんじゃない?」というのは非常に妥当なメッセージだと思うのですが,この本のあとがきに何気なく書いてある一言がこの本の論理構成を壊しているような気がしてならない.

あとがきには「正社員であってもアルバイトであっても派遣であってもいいからとりあえず何らかの仕事に腰を落ち着け」てみるといい,と書いてあるのです.

僕が思うに,就職活動がうまくできないorできなかった人でも多くの場合はアルバイトはできていると思うので,このアドバイスが参考になる人ってかなり少ないのではないだろうか.就職活動に挫折して非正規雇用に落ち着いてしまう(いわゆるフリーター化)若者の増加を憂えて,「もっと気楽にシュウカツしなよ」っていうのはいいメッセージだと思うんだけど,「アルバイトでもいいよ」ってなると「じゃあ俺はこれでいいんだね」ってことじゃないですか.

あとは「『まだ働く決心がつかない』とか思って就職ではなく大学院や専門学校へ進学する」者(僕もそのうちの一人と言わざるを得ないんだと思う)へのメッセージにもなっているかもしれないけど,それにしたってあとがきによってメッセージのターゲットが狭くなっているような気がしました.

あと微妙に思った点は二点.

  • 香山さんは,在学中に就職活動して卒業後即働き始めるのが当然で,「学校を卒業してから就職活動を始める」なんて荒唐無稽,と思っている節がありますが,在学中に就職活動するのはそこまで自明ではないと思う.日本は「新卒採用」が当たり前だけれどこれはかなり特異な現象であり,欧米では卒業後から就職活動するのが当然の国も多くあるし,日本でも大学に一握りしか進学していないころはそうだったのではなかろうか.漱石の「こころ」にもそんなシーンがあった. 中途採用の割合が増えるに従い,新卒採用が比較的自明でなくなってくる,というのはむしろわかりやすい構図だと思う.
  • 「学生当人たちに深刻さが感じられない。『もっと雇用を!』と学生がデモを起したという話も聞かない」と書いてますが,たしか女子学生がリクルートスーツでデモ行進を行った,という事例があったと思う.ソースがないけれど.